2019年方針

 2019年からの基本方針について
                     2018年11月12日 氷室俳句会主宰 尾池和夫

1.『氷室』の俳句の印刷をすべて密着割付とします。
 表紙2から句会報まで俳句を均等割付で今まで印刷していましたが、今後はそれを廃止して、密着割付とします。
 参考のため、2018年10月号の密着割付を用意してあります。

理由
 伝統の様式という誤認に基づく、無条件な思考停止による形式を基本的に見直す立場からの結論です。
 『氷室』では分かち書きを認めていません。均等割付は究極の分かち書きでもあると思います。そのことを示すために次の、4文字の俳句を12月号に出しました。また17文字の句も比べてみました。均等割付では、二つの句が、

        ルビ・うしのあゆみがおそい
鰯        雲        㸪        昼      尾 池 和 夫
さ と や ま の す そ よ り い ろ は も み ぢ か な      尾 池 和 夫

 となり、前の句は間延びしてしまいます。つまり、分かち書きの一種になっています。
 俳句は短い文芸です。きちんとできていれば、空白を入れなくても意味は確実に伝わります。

2.『氷室』の印刷は縦書きとします。
 日本語の大きな特長として縦書きが行われています。この文化を守ることが重要です。
 ロンドンでは、書店で皆、首を右に倒して本を探していると、イギリス人の友人が教えてくれました。彼は、日本では首を傾けずに本が探せるというのがいいと言いました。
 ひらがな、カタカナ、漢字が縦書きの文化として発展してきました。数式や英文を引用することの多い自然科学の学術論文などでは横書きが中心であり、インターネットの世界でも技術に合わせて横書きが中心です。
 横書きでも縦書きでも読み書きができる言語はほとんどなく、それが日本語のきわめて優れた特長です。有馬朗人さんが言っておられるように、横書きの俳句があってもいいのではないかと、私も思います。
 氷室俳句会でも、俳句をインターネットに載せる場合に、縦書きで載せることを一度は試みましたが、手間がかかるので止めました。

 一月の川一月の谷の中  飯田龍太

 縦書きによって左右対称性が理解できる名句の例です。

3.『氷室』では、有季定型、文語体、歴史的仮名遣いの句を基本とします。
 氷室俳句会は、従来も、有季定型で歴史的仮名遣いの句を基本としてきました。今後もそれを踏襲します。そのことは、以前から所属している会員には自明の理となっていると思われますが、最近入会された方には、そのことと、その根拠が明確には伝わっていないと感じています。
 氷室俳句会で歴史的仮名遣いを基本とする理由について、私は、多くの歳時記に採用されている季語が、文語体の歴史的仮名遣いで編集されているからであると考えています。
 一句の中で文語体と口語体の混用は認められず、また、口語体の良さを際立たせないと、句はなかなか成功しません。したがって季語にあわせて句を文語体、歴史的仮名遣いとすることを活かしていきたいと思います。

4.『氷室』に投句された句を添削して掲載する場合があります。
 投句用紙によって投句された句は、主宰が選句し、場合によっては上記の方針などの基に添削して掲載する場合があります。これは俳句界の習慣として広く認められていることです。過去において勝手に改編したことを不服として提訴した人がいますが、最高裁の判断では添削は認められることとされました。
 添削された句であっても、最初にその句を発想した作者の作品であるということも広く認められています。

5.新しく始まる内容
●氷筍集の欄を設けます。
 氷華集には四句全体の評価とその中に一句が載っています。そこに載らなかった方の作品で「この句を」という、言わば「俳者復活」の一句を主宰とは異なる視点で選んで掲載します。当面の選者は尾池葉子編集長です。

●青木亮人さんによるエッセイ「季節と追憶」を連載します。
 第一回は「(一)食事」です。著者を紹介します。


「青木亮人・あおきまこと。一九七四年、北海道生まれ。愛媛大学准教授、専門は近現代俳句研究。著書に『その眼、俳人につき』(邑書林)、『俳句の変革者たち』(NHK出版)等、最新の刊行は『近代俳句の諸相』(創風社出版)。各俳誌で評論等を連載中。」